思い残すことなく、自分らしく人生を締めくくるため、また、遺族が後始末に苦労しないためにも最期のときの 段取りを 組んでおけば、多少なりとも安心してそのときを迎えることができるのではないでしょうか。遺言作成以外で考えられることを挙げてみます
葬儀費用の全国平均は230万円とのことですが、地域により大きく異なる上、個別の差も甚だしいのであまり意味の ある数値とは言えません。しかし、諸外国の平均値である数十万円と比較すると、わが国の高額負担の傾向がわかります。にわか仏教徒と 言われようが、その方が安らかに逝けそうだと思うのであれば、一般慣習に従った葬儀を執り行うのもよいでしょう。しかし、本人も望まず、 遺族も世間体のために無理な負担をしているということなら、一考の余地があるのではないでしょうか。これからは、 どのような葬儀にしたいのか、自らの意思をしっかり持ち、それを反映させてもよいのではないでしょうか
葬儀には(1)遺体の処理、(2)死の社会的告知、(3)哀悼と訣別の儀式、という意味があります。 一般的な葬儀を行わなわない場合でも、遺体の処理と役所への届出は行わなければなりませんし、社会的にも告知しなければ 混乱を来たします。問題になるのは(3)で、この趣旨に沿うものならば一般慣習に従った葬儀以外にも「偲ぶ会」や「お別れ会」と称し、宗教や形式に とらわれない、個性的で経済合理性のある催しを設定できます。また、近年は身近な親族だけで行う家族葬も増えています
ただし、ひとつ気に留めておかなければならないのは、自らの希望とは別に、遺族の社会的な立場や想いもあるので、 その調整をしておかないと遺族の思わぬ負担となってしまうことです。死亡通知を出状するのみとする場合や、供物・香典を辞退する場合 などでは、周囲が納得しなければ遺族がその対応に苦労します
葬儀業には許認可制度がなく、悪質な業者もあるので注意が必要です。病院専属の葬儀社の場合、先方の言いなり・ 言い値になりがちなので注意が必要です。また、互助会という名でも営利企業なので、その視点で検証することが大切です。農協や生協、 あるいは自治体が取り扱っている場合もあり、こちらは一般的に内容が明確で価格もリーズナブルです。いずれにしても数多く調査・比較して 自ら選択し、更に生前契約までしておけば自分も安心ですし、遺族の煩雑さも軽減されます
<生前契約の注意事項>
現在、わが国では遺体のほぼ100%が火葬されていますが、遺骨の扱いについては多様化が進んでいます。埋葬 は(1)既存の家墓に入る、(2)新たに家墓を建立して入る、(3)永代供養や合祀を依頼する、などのケースに分かれます。形式としても 一般的な 墓石によるもののほか、樹木葬、芝生型墓地、公園型墓地など選択肢が増えています。永代供養でも記念碑タイプ、納骨堂タイプ、 墓石タイプなどの種類があります。また、核家族化を反映し、夫婦のみ一代限りで永代供養を受ける夫婦墓などもあります
埋葬以外では散骨や手元供養があります。墓地以外に遺体や遺骨を埋葬してはならない旨の法律はありますが、 散骨については明確な法規制がなく、海に散骨をする海洋葬を取扱う業者もあります。また、遺骨は必ず埋葬あるいは散骨しなければ ならないというものではなく、手元に置いて供養しても構いません。散骨したときにも、遺族がお参りするためのシンボルを希望する 場合は、分骨をして手元で供養するケースが多いようです
手元で供養する場合にも卓上型と携行型があります。卓上型には遺骨を納めた石製の卓上墓やアート骨壷、さらに 遺骨を混入・封入した置物やプレートなどが、また、携行型には同様に細工したペンダント、ネックレス、ブレスレット やリングなどがあります
墓地の永代使用料や管理料、さらに墓石代を合わせると高額になり、また、比較的リーズナブルな公営墓地は 高倍率の抽選だったりと、新たにお墓を設置するのも大変です。尚、健康保険からは5万円の埋葬料を受給できます
人は死生観などにより、葬儀同様、お墓についてもそれぞれ思うところがあるはずです。 遺族にも配慮しながら、自分らしい最期を演出したいものです。お墓や埋葬、散骨についても生前の建立や契約が出来れば、自分も安心 でき、遺族の負担も減ります。それが叶わない場合は、遺族にその意思を 託すことになります。葬儀やお墓についての遺言は法的効力を持ちませんが、通常は最期の遺志として尊重されるはずです。 遺言とは別にエンディングノートに記し、遺す方法もあります