国民年金は社会保険制度のひとつで、老後も最低限の生活を確保できるように国が設定した仕組みです。 60歳未満の成人はすべて加入が義務付けられていますが、自ら手続きを踏み、一定の加入(保険料支払い)条件を満たさないと 受給できません。ただ、厚生年金適用事業所に勤務する者(要件を充足しないパートタイマー等を除く)は、給与から厚生年金保険料が天引きされることで厚生年金の被保険者となる だけでなく、2号被保険者として国民年金にも加入していた(保険料を支払っていた)ものとみなされます。 2号被保険者の配偶者(20歳以上60歳未満)も年収が「130万円未満で且つ相手配偶者の2分の1未満」であれば3号被保険者となり、保険料を負担しなくても 加入していたとみなされます(厚生年金の適用範囲拡大化により3号非該当は徐々に増える傾向にあります。詳しくはこちら)。 どちらにも該当しない人は1号被保険者として保険料を支払わなければなりません
給与から天引きされている間はあまり負担感が無いのですが、退職して再就職しない場合は保険料16,980円 (2024年度)を60歳まで毎月支払わなければなりません。配偶者の分も負担する場合は倍の33,960円になります
本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定以下の場合、保険料の支払い免除を受けられ ますが、退職による減収で支払いが困難な場合は、前年所得に係らず免除を受けられます。年金手帳と離職票または雇用保険受給資格者証 を携行して申請します。免除申請をせずに単純に未納のまま放置すると、未加入となり受給に支障が生じます。免除認定期間は加入期間と みなされ、過去の未納期間が3分の1未満であれば障害基礎年金や遺族基礎年金の保障対象となりますし、老齢基礎年金の受給資格期間にも 加算されます
老齢基礎年金については免除の全期間が受給資格期間に加算されるだけでなく、年金額の計算においても 免除割合に応じ算入してもらえます。算入期間は全額免除で2分の1、4分の3免除は8分の5、半額免除は4分の3、4分の1免除は8分の7です(平成21年4月以降の期間)。 免除された保険料は10年以内なら追納できますが、3年目からは利子も加算されます。このほかにも50歳未満や学生の低所得者を対象に 保険料支払いの猶予制度がありますが、これらは受給資格期間には加算されますが、追納しない限り年金額には反映しません
国民年金の老齢基礎年金受給資格が無いと老齢厚生年金も受給できないので、きちんと手続きをしておくことが 大切です。また、他の社会保険給付と重複する場合は受給制限されることが多く、さらに同一支給事由で国民年金と厚生年金が併給 される以外は、複数の受給権が発生しても「1人1年金」の原則により、受給できない年金が発生する可能性があるので注意が必要です。
<老齢基礎年金>
国民年金への加入期間(受給資格期間)が10年以上(2017年7月までは25年以上)あれば65歳から受給できます (60歳時点で25年に満たない場合、1号被保険者なら最大70歳まで延長して任意加入できます)。 ただし、昭和31年4月1日以前に 生まれた方には、厚生年金加入期間が要件を充たせば、25年に満たなくても受給資格を得られる特例緩和措置があります。尚、 受給資格期間には保険料納付済み期間と保険料免除期間のほか、 カラ期間も算入されます。カラ期間とは基礎年金額には反映せず、受給資格の判定についてのみ算入される期間で、厚生年金に加入していた 20歳未満、あるいは60歳以降の期間や、昭和36年4月から昭和61年3月までの間に厚生年金加入者の配偶者だったが国民年金に任意加入して いなかった期間、さらに平成3年4月に強制加入となる前で任意加入していなかった学生の期間などが該当します
年金額は全期間(通常20歳から60歳までの40年間)保険料を納めた場合で、新規裁定者は816,000円、既裁定者は813,700円(2024年度)であり、65歳から 受給できます(新規裁定者・既裁定者の区分等、詳細はこちらから参照)。満額に達しておらず、保険料の支払い余力があれば65歳になるまで任意加入することも出来ます。 また、繰り上げ受給や繰り下げ受給もできます。1ヶ月繰り上げるごとに0.5%(2022年4月以降60歳となる人からは0.4%)減額されるので、最大繰り上げて60歳から受給 すれば本来受給額の70%(2022年4月以降60歳となる人からは76%)となり、生涯その減額された年金を受給することになります。また、寡婦年金の受給権を失うなどのデメリットもある ので、繰り上げを選択する場合は注意が必要です。逆に最大70歳まで受給を繰り下げることも出来ます(2022年4月以降は75歳まで繰り下げ可)。この場合1ヶ月繰り下げるごとに 0.7%増額されるので最大42%増し(75歳まで繰り下げると84%増し)になります。どの受給方法が得かは、何歳まで生きたかの結果を見なければ判定できません
第1号被保険者のみが加入できる付加年金は老齢基礎年金の補足として有効です。月々400円の保険料で 年金額が「200円×付加保険料納付月数」だけ増えるので2年間で納入分相当額を受給できます。また、老齢基礎年金を繰り上げ・繰り下げした場合、 付加年金の受給時期もそれに連動し、年金額も同率で増減します
<老齢厚生年金>
老齢基礎年金の受給資格を充たし、老齢厚生年金の被保険者期間が1ヶ月以上あれば 65歳から老齢基礎年金に上乗せするかたちで受給できます。 ただし、昭和36年4月1日以前生まれの男性、昭和41年4月1日以前生まれの女性で被保険者期間が1年以上 ある方は、経過措置により65歳前に「特別支給の老齢厚生年金」を受給できます。 特別支給の老齢厚生年金には、受給額が勤務中の給与額の影響を受ける報酬比例部分と、被保険者期間 月数により受給額が決まる定額部分があり、それぞれの受給開始時期は生年月日により下記のように なります。65歳になると報酬比例部分は一般的に言うところの「(老齢)厚生年金」へ、定額部分は「(老齢)基礎年金」へと移行します。 老齢厚生年金も繰上げ、繰下げが可能ですが、繰上げは基礎年金とセットで繰上げなければならないこと、繰下げの場合は加給年金額も繰下げになるが増額されないことなどに注意が必要です
生年月日 | 定額部分 | 報酬比例部分 | |
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男性 | 女性 | ||
昭和16年4月1日以前 | 昭和21年4月1日以前 | 60歳から | 60歳から |
昭和16年4月2日〜昭和18年4月1日 | 昭和21年4月2日〜昭和23年4月1日 | 61歳から | |
昭和18年4月2日〜昭和20年4月1日 | 昭和23年4月2日〜昭和25年4月1日 | 62歳から | |
昭和20年4月2日〜昭和22年4月1日 | 昭和25年4月2日〜昭和27年4月1日 | 63歳から | |
昭和22年4月2日〜昭和24年4月1日 | 昭和27年4月2日〜昭和29年4月1日 | 64歳から | |
昭和24年4月2日〜昭和28年4月1日 | 昭和29年4月2日〜昭和33年4月1日 | 支給無し | |
昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日 | 昭和33年4月2日〜昭和35年4月1日 | 61歳から | |
昭和30年4月2日〜昭和32年4月1日 | 昭和35年4月2日〜昭和37年4月1日 | 62歳から | |
昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日 | 昭和37年4月2日〜昭和39年4月1日 | 63歳から | |
昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日 | 昭和39年4月2日〜昭和41年4月1日 | 64歳から |
加給年金額:特別支給の定額部分または65歳以降の老齢厚生年金の受給権者に 配偶者や子がいる場合、加給年金額 が加算されます。更に昭和9年4月2日以後生まれの受給者には特別加算もあります。受給条件は、本人の被保険者期間が20年以上、 配偶者の年収が850万円以下、また、対象となる子は18歳の年度末までとなっています。また配偶者が65歳に達したり、自身が被保険者 期間20年以上の(特別支給)老齢厚生年金の受給権を得た場合などには支給停止となります。加給年金額は配偶者と2人目の子 までは1人につき234,800円、3人目以降の子については1人につき78,300円で、特別加算は受給者が昭和18年4月2日以後生まれの場合 173,300円です(2024年度)。尚、配偶者が老齢基礎年金の受給権を取得すると、加給年金額の停止と入れ替わりに、配偶者の基礎年金に「 振替加算」がプラスされ、夫婦計での減額が抑制されます
特別支給の老齢厚生年金は雇用保険の基本手当を受給すると支給停止となります
(特別支給)老齢厚生年金の受給権を得ても継続して勤務する場合、その報酬額によっては年金が減額されることが あるので、給与との重複が想定される場合はあらかじめ確認した方がよいでしょう
雇用保険の高年齢雇用継続給付を受ける場合は、その支給率に応じ特別支給の老齢厚生年金が減額されます
遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、厚生年金の被保険者実績がある人の死亡については両方を、国民年金のみ の場合は遺族基礎年金を、遺族が受給できる可能性があるので、当該事態発生時はもちろん、 生保の必要保障額を検討したり、ライフプランを作成する場合などはチェックしましょう。年金額の詳細については別途確認願います
遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
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受給事由 |
★1及び2については保険料納付要件を充足する必要がある <保険料納付要件> 死亡月の前々月までの期間において保険料滞納期間(免除期間は滞納ではない) が3分の1未満であるか、前々月までの1年間に保険料の滞納が無いか、いずれかの条件を充たす |
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受給権者 | 死亡者により生計を維持されていた(今後、年収が850万円以下の見込みであれば可)a.
子(18歳年度末までの未婚者) b.「前記条件に該当する子」のある(死亡者の)配偶者 ★b.がいる場合、a.には支給されない ★a.に該当する者がいなくなれば受給権者はいなくなる |
死亡者により生計を維持されていた a.妻・夫・子(18歳年度末までの未婚者)
b.父母 c.孫(年齢条件は子に同じ)
d.祖父母 ★上記記載順は優先順位を表し、死亡時の最上位者のみに受給権がある (その者が受給権を失っても下位者に権利が 移転しない) ★夫・父母・祖父母は55歳以上の者に限られ、且つ支給は60歳からとなる ★妻がいれば子には支給されず、子がいれば夫には支給されない ★子の無い30歳未満の妻は5年間のみの受給となる |
年金額 | 受給条件を充たせば一律定額支給となる 基本額(2024年度) 新規裁定者:816,000円+加算額 既裁定者 :813,700円+加算額 <加算額> (新規裁定者・既裁定者とも同一) 子のある妻:子2人目までは 1人につき234,800円、3人目以降は1人につき78,300円 子 :子が2人のときは 234,800円(1人の子のみが受給対象は加算なし)、3人目以降は1人につき 78,300円 複数の子が受給権者の場合は計算結果を均等割りする |
死亡者の老齢厚生年金(報酬比例)の4分の3 ★受給事由1・2・3の場合、上記老齢厚生年金の算出にあたり、25年分が最低保障される ★受給事由1・2・3と4では計算方法が少し異なるので、両方に該当する場合はどちらの事由に基づき受給した方がよいかを 確認する必要がある ★同時に複数の者が受給権を得た場合は計算結果を均等割する |
その他 | <寡婦年金> 死亡した夫が第1号被保険者として保険料納付済み期間と免除期間を合わせて 10年以上あり、且つ婚姻関係が10年以上ある場合、遺された妻に対し、夫の死亡前月基準で算出した老齢基礎年金額の4分の3が 支給される。支給期間は妻が60歳から65歳に達するまでの間。ただし、夫が障害基礎年金や老齢基礎年金を受給していた場合は 支給されない <死亡一時金> 第1号被保険者として保険料納付済み期間が36ヶ月以上 ありながら、老齢基礎年金も 障害基礎年金も受給せずに死亡した場合、同一生計の遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹)に支給される ★一時金の額は保険料納付済み期間に応じ、12万円から32万円まで ★保険料の一部免除を受けている場合、支払い割合を乗じた 月数を納付済み期間に加算できる(例:4分の1免除を受けていた月数に4分の3を乗じた月数を加算) ★遺族基礎年金を受給できる遺族がいる場合は支給されない ★寡婦年金と死亡一時金の受給権を 同時に取得した場合は、どちらか一方を選択する ★付加保険料を3年以上納付していた者には8,500円が加算される |
<中高齢の寡婦加算> 夫死亡時に対象となる子がいないために遺族基礎年金を受給できない40歳以上の妻に対し、65歳になるまで加算 される。また、 夫死亡時及び妻が40歳のときには対象となる子がいて遺族基礎年金を受給していたものの、その後、子が非対象者となり遺族基礎年金 の受給権を失った場合もその時点から加算される。ただし、上記4の受給事由の場合は夫の厚生年金被保険者期間が20年以上あることが 要件となる 金額は一律定額で612,000円(2024年度) <経過的寡婦加算> 妻が65歳になり、中高齢の寡婦加算が打ち切られると、自身の老齢基礎年金の受給が開始するとは言え、 受け取り総額が減ることが懸念されるため、経過的寡婦加算が支給される。これは昭和61年4月の基礎年金制度発足後、すべての保険料を納付 していたとしても(第3号被保険者としての届出を含む)、老齢基礎年金額が中高齢寡婦加算に満たない 昭和31年4月1日以前生まれの者に対し、 その不足額を埋めるものであり、加算額は生年月日により異なる |
障害基礎年金と障害厚生年金があり、厚生年金被保険者は同一事由で両方を同時に受給できる可能性もあるが、 障害厚生年金の方がカバーする障害等級の範囲が広いので障害厚生年金のみの場合もあります
障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
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受給要件 | 国民年金の被保険者期間中や60歳以上65歳未満の間に傷病の初診日があり、その日から1年6ヶ月を経過した日、
またはそれ以前に、1級または2級の障害状態と認定されること(当認定日を障害認定日という)。 ただし、20歳前に初診日があっても(生まれつきを含む)20歳時点、あるいは20歳以降の 障害認定日に、該当する障害状態が認定されれば、以降の受給権を取得できる。ただ、この「20歳前初診日 の障害基礎年金」は 前年所得が一定額を超えると全額あるいは半額が支給停止となる。制限額は扶養家族数により異なり、扶養家族なしの場合で 全額停止が4,721,000円、半額停止は3,704,000円となっている(20歳前でも厚生年金適用事業所に勤務する者は2号被保険者であり、 当制度ではなく本来の障害基礎年金の対象となります) ★遺族基礎年金と同様の保険料納付要件を充足する必要がある(20歳前初診日の場合を除く) ★障害基礎年金受給者は国民年金保険料の法定免除を受けられる |
厚生年金の被保険者期間中に 初診日があり、障害認定日に1級・2級・または3級の障害状態にあること。尚、3級に至らない一定の 障害に対し「障害手当金」という一時金支給制度がある |
年金額 | <2024年度基本額> 新規裁定者 1級:1,020,000円+子の加算額 2級:816,000円+子の加算額 既裁定者 1級:1,017,125円+子の加算額 2級:813,700円+子の加算額 <子の加算額> 受給権者に生計を維持されている子がいる場合に加算される(年収や年齢の要件は遺族基礎年金 に同じ) 加算額(新規裁定者・既裁定者とも同一) 2人目までは1人につき234,800円 3人目以降は1人につき 78,300円 |
1級:老齢厚生年金額×1.25+配偶者の加給年金額 2級:老齢厚生年金額+配偶者の加給年金額 3級:老齢厚生年金額 ★上記、老齢厚生年金額(報酬比例)は被保険者期間が25年に満たない場合は25年で算出し 、且つ、3級の場合、以下の最低保障がある 新規裁定者:612,000円 既裁定者 :610,300円 ★障害手当金:上記より軽度の一定の障害が残ったとき、報酬比例年金額の約2年分が一時金で給付(以下の最低保障あり) 新規裁定者:1,224,000円 既裁定者 :1,220,600円 <配偶者の加給年金額> 1級・2級の受給権者に生計を維持されている配偶者がいる場合に加算される(老齢厚生年金と違い、 特別加算額は無い) 加算額:234,800円(新規裁定者・既裁定者とも同一) 尚、配偶者が加入期間20年以上の 特別支給老齢厚生年金を受給し始めたり、65歳に達したときには 打ち切られるが、昭和41年4月1日以後に生まれた配偶者自身が老齢基礎年金を受給する際には、振替加算が 行われる。金額は老齢基礎年金におけるものと同じで、生年月日により異なる |